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会員コラム

裁判員裁判が始まった

弁護士 山﨑俊之

 平成21年8月3日,東京地方裁判所で裁判員裁判が始まり,くじで選ばれた6名の市民が裁判員として裁判に参加し,8月6日判決が出ました。事件は殺人。検察官は懲役16年を求め,他方弁護側は寛大な判決を求めましたが,懲役15年の実刑判決でした。
 裁判員裁判は,普通の市民が,被告人とされている人が,事件をやったか(有罪),やらないか(無罪),やったとすればどれくらいの期間刑務所に入ってもらうか(実刑判決),あるいは刑務所に入らないまでもどれくらいの期間社会で身を慎んだ生活を送ってもらうか(執行猶予付判決)を判断する裁判です。
 これまで,刑事事件は裁判官が判断していました。裁判官は法律の勉強をした法律の専門家です。法律の専門家が判断していた刑事裁判にどうして市民も参加することになったのでしょうか?
 最高裁判所のホームページによれば,国民の司法への理解を深め,司法に対する国民の信頼を向上させるためだそうです。
 私自身,弁護士という職業につくまでは裁判所には一度も行ったことがありません。そもそも裁判所というお役所は,何らかのトラブルがあったときに行くところです。トラブルのない人は裁判所に行く必要はありません。多くの人が裁判所には一度も行ったことがないのではないかと思います。これまで一度も利用したことのないお役所について「司法に対する国民の信頼」と言われても,多くの人が実感を持てないのではないでしょうか。
 それでも裁判員裁判は始まりました。国が勝手に始めたのではなく,我々が選挙で選んだ議員が,国会で,裁判員の参加する刑事裁判に関する法律を成立させて始まりました。
 始まった以上,弁護士たるもの,被告人に有利になるように活動しなければなりません。市民の方に弁護側の主張を分かってもらうために,「殺意」は何て説明するかだとか,図を示したりするだとか,これまで行われた模擬裁判を通じて,いろいろ試してきました。そして,いよいよ実践が始まったわけです。
 もしも裁判員に選ばれたら,弁護人が検察官の言い分に対してどのように反論するのか,その反論は分りやすいか,その反論に共感できるかなどに注目していただきたいと思います。
 釧路での裁判員裁判は,市民の方に多大な負担を強いるものです。
 釧路地方裁判所管内は,四国の約1.7倍の面積があります。四国は4か所で裁判員裁判をやるにも関わらず,釧路管内は釧路でしか裁判員裁判をやりません。帯広,北見,網走などの方も100キロ以上離れた釧路まで宿泊予定で来ていただくことになります。釧路弁護士会では平成19年9月に最高裁判所に帯広や北見でも裁判員裁判を実施して欲しいと要望書を提出しましたが,なしのつぶてでした。
 釧路で行われる裁判員裁判は,裁判の中身以前に,裁判所に来ていただくだけでも,市民の方に多大な負担を強いるものとなっています。
 遠方からわざわざ来ていただく市民の方のためにも,せめて裁判の中身は,分かりやすくして,判決後に裁判に参加してよかったなと思っていただけるように努力したいと思います。