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平成14年9月
(先月は、都合によりニュースレターの発行を休んでしまいました。ごめんなさい…。みなさま、お久しぶりです!) さて、中学校も「絶対評価」になり、通知票が渡されたわけですが、まずは、その結果の報告です。
塾生の通知票を集計・分析してみると、評価が「以前よりも上がった生徒」は70%強、「上がりも下がりもせずの生徒」は20%弱、「以前よりも下がった生徒」は10%弱という結果になりました。(通常、学年が進むにつれ、周囲も勉強をするものなので、その中で通知票の評価を上げて行くことは、今まではなかなか難しいことだったのですが…) 今まで「4」や「5」ばかりであった生徒には、以前とあまり変わらない評価でしたが、今まで「2」や「3」が多かった生徒には、以前よりもかなり高い評価がされているといえます。(「以前よりも下がった」10%弱の生徒は、残念ながら、我々から見ても、生活態度や、勉強に対する姿勢に問題がある生徒が大半ですから、実質的には、ほとんどの生徒の評価が上がったということになります)以前、このニュースレターで予想していた通りの結果になってしまいました。
学力低下がいかに深刻なものであるかは、再三にわたって、このニュースレターでも述べてきましたが、それに加えて、肝心の「評価」すらあてにならないわけですから、我々としても、これからの小・中学生の進路指導には悩みます…。 まずは、全道規模の学力試験を受験してもらい、その中での、相対的な実力を見極めなければ、適切な進路指導は不可能。ということになりつつあります。ぶっちゃけた話、「学校の成績は良いみたいだ」ということで上位校を受験したものの、まったくの論外の点数で落ちてしまう。そんなことが、今後、実際に多くおこりそうな気配があるのです。 「偏差値」に重きを置きすぎた反省から、それを重視しないように方針転換をしたものの、学習塾の進路指導の現場では、以前よりも「偏差値」を重視しなければならない(言葉を変えると、「学校の進路指導は、あてにならない」ものになってしまう可能性が高いということです)という、皮肉な結果になりつつあります。
先日、日曜日の朝のある番組を見て驚きました!東京都の杉並区教育委員会参与に、藤原和博さんという方がいらっしゃるのですが、この方の授業、中学校の選択社会科の授業に、「世の中」科なるものが存在するのです。氏は、元リクルート社のエリート社員。さまざまな新規事業のプロジェクトを立ち上げてきた、第一線級のビジネスマンです。 さて、「世の中」科の授業はといいますと…。『ハンバーガー店の店長になってみよう』などというもの!(笑)第1回目は、ハンバーガー店をどこに出店すると、もうかるのか?第2回目は、集客力。つまり、どういった条件が整えば、店に人が集まるのか?といったもので、生徒たちは、身近な商店やコンビニエンスストアなどで、はやっている店・はやっていない店の比較を行い、班を編成して、その理由を検討するといったものです。 ちなみに「世の中」科には、『答え』なるものは存在しません!みんなが議論を進める中で、世の中の実際を知ろうというものです。中学生が、世の中について腑に落ちない点、それを腑に落ちるようにするわけです。難しくいえば、「学校で習う知識(教科学習)と、実際の世の中で使う技術との橋渡し」を行うということになります。 「中学生くらいになると、大人のだらしなさが分かる。基本的人権とか平等とかいっても、アフガンで何がおきているか分かっている。ウソの世の中を教えても、ウソくさいな。ということになる」というのが、氏の主張です。勉強はさっぱりで、普段の授業ではヤル気なし。そんな生徒たちも、この「世の中」科の授業では、実に生き生きしているとのことです。
「世の中」科のことを知って、昔のことを思い出しました…。以前私は、一斉授業形式の学習塾で講師をしていました。ピークの頃には、400人以上の生徒を担当していたのですが、生徒が多くなると、ケンカだの喫煙だの、そういったトラブルが多くおこったものです。(あっ!ウチの塾はほとんどありませんよ。本当に本当ですからね!) 喫煙している生徒を見つけたときに、本来の授業から、『なぜ、未成年者はタバコを吸っちゃダメなのか?』という授業に変更したことが何度かあります。その理由を、クラスの生徒全員にたずねます。すると、「健康に悪いから」「子どもが生まれたら、悪影響が出るから」「ガンになる確率が高くなるから」といった答えが返ってきます。「じゃあ、大人はどうして吸っていいの?健康に悪いと知っているのに」と質問をすると、「それは、大人だから…」と、生徒たちは答えに窮します。 「じゃあ、未成年者が酒を飲んじゃダメなのは、どうしてだと思う?」同様に、生徒たちから意見が出ます。こんな質問を繰り返していくうちに、生徒たちは「あれっ、本当にどうしてなんだろう?」という疑問に至ります。そして、討論を経てどういう結論に達するか?結論はこうです。『法律で決まっているからダメ』これ以外にはあり得ません。 少なからず、「え?何それ?」と思う生徒がいるのですが、私は話を進めます。「ヘンな話だけど、マリファナを吸っても良いですよという国や、麻薬中毒患者が多すぎて、それを治療するために、弱い麻薬を支給する国もあるんだよ。男同士・女同士で結婚できる国や州だってある。16歳で車の免許をとれる国や、18歳で選挙権をもらえる国がある。日本人から見れば、えっ?て思うよね…。でもね、その国では、法律でそれを決めているんだよ!」こんな話をすると、生徒たちは実に生き生きしてきます。 麻薬や同姓同士の結婚については、「それは、国として認めるべきではない」「日本の制度の方が正しい」「そんなの、絶対におかしい」色々な意見が出ます。そして、喫煙を見つかって叱られた本人も、色々と考えざるを得ません。(笑)ついでに、「タバコってね、実はほとんどが税金なんだよ。酒だってそうだし、じゃぁ、健康に悪いですから、売るのを禁止しましょう。そうしちゃうと、入ってくる税金がガクンと減ってしまうんだ。みんな、どう思う?」「未成年者はタバコを吸ってはいけません。大人になっても、吸わない方が良いですよ。そう言いながら、その税金をあてにしている面もあるわけだよ」ここでも、生徒たちは活発に意見を出してくれます。喫煙という行為からでも、法律や制度、大人の社会のホンネとタテマエが垣間見えるわけです。
さて、話は少し脱線ぎみで、あまり良い例えではなかったかも知れませんが、「新指導要領」でいう『生きる力をはぐくむ教育』それを実現させることは、先ほどの「世の中」科なら可能であると思います。 「考える力」や「生きる力」を養うためには、『物事の本質をとらえる力』をトレーニングすべきです。残念ながら、公教育においては、学力の回復・向上はもはや不可能です。しかし、「世の中」科のような授業を行えば、生徒たちのヤル気を引き出すことは可能であるはずです。公教育に可能性があるとすれば、「総合的な学習の時間」を用いて、教員たちが、生徒に世の中の実際をいかに知らしめるか?その点に尽きると思います。学校の先生!がんばんなさいよ!(しかし…、学校の先生ってのは、意外に「世の中の常識を知らない」方も多いようですから、そういう人が生徒に世の中を教えるってのは、無理かも知れませんね)
「世の中」科の発想で行けば、生徒たちの先生には、大人のだれもがなれるはずです。例えば、飲食店を経営されている方ならば、先ほどのハンバーガー店と同じく、立地条件や集客、そして接客のマナーなどを通して世の中を教えることができるはずです。 税理士さんや社会保険労務士さんなどに、会社の運営や税金・社会保険・年金などの実際を聞くのも、世の中を知るとても良い勉強になるでしょう。営業の方に、営業のノウハウを教えてもらうことなどは、もっともタメになることと思います。(私自身が学びたいくらいですから!)専業主婦の方に、実際の家計の話していただき、家計の切り盛りを生徒にシュミレーションさせれば、親の苦労も伝わるかも知れませんね!(笑) とにかく、可能性は無限に広がると思います。どなたか、「おっ、それおもしろそうだね。参加してもイイよ」「講師になってあげる」という方がいらっしゃったなら、ぜひご連絡を下さい!私教育版の「世の中」科を始動させたいものです。
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