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  VOICE   No.16  

平成16年10月

「がまんする能力」の低下


 「自分が子どものころ、携帯電話やテレビゲーム、インターネットがあったなら、どうしていただろうか?」たまにこんなことを考えます。私なら、はっきり言って遊びまくっていたでしょうね!考えてみれば、今の子どもたちは、昔よりずっと『誘惑』が多いんですよね。その意味では、勉強と部活や遊びを両立しようと思ったら、昔より大変かも知れませんね。

先日、ベストセラーになった、『バカの壁』(養老孟司著/新潮新書)を読んで知ったのですが、子どもたちの「がまんする能力」の発育は、この30年間で4・5年遅れているとのことです。私たちの生活は、以前よりも便利で豊かなものになりました。しかし、物質的に豊かになった反面、子どもたち(子どもたちに限りませんが)は精神的に貧しくなってしまい、心の発育が遅れている子どもが、年々増えているのです。




子どもがキレる原因って?


 少年たちによる凶悪事件の増加、犯罪の低年齢化など、子どもがキレる(この言葉、好きじゃありませんが)現象が、深刻な社会問題になっているのはご存知の通りです。たまにTVに偉そうな(?)学者なんかが出てきたりして、「脳の前頭葉の発育に問題がある」だとか、「カルシウム不足などの偏った食生活に問題がある」などと言ったりしているのを見ると、『そりゃそうだろうけど、それ以前の「心」の問題でしょうが…』と、バカらしくて溜息が出てしまいます。みなさんは原因をどうお考えになりますか?私は、こう思うんです。『理由はただ一つ。「人を思いやる心」が不足していることである』と。




実体験の不足とバーチャル空間


 最近、TV番組で、動物が死ぬ悲しいシーンってあまり見ないですよね。聞くところによると、そういうシーンを放送すると、保護者から苦情が殺到するとか…。「ウチの子が傷ついたじゃないの!」「子どもが心に傷を負ったじゃないの!」いやはや、こんな親が増殖したら、世も末ですね。もし目の前にいたなら、『生き物ってね、必ず死ぬんだよ。どんなに愛しても、必ず別れの時は来るの!だからこそ、子どもたちは「命の尊さ」を知るんだよ!』って怒鳴ってやりたいですね!

今の子どもたちは、インターネットに携帯電話、メールにテレビゲームなどの、いわゆるバーチャル空間でのコミュニケーションに慣れていますが、人とじかに触れ合うこと・自然に触れるといった実体験が、どんどん減ってきています。子どもたちの、相手に対する想像力が、年々欠如しています。おまけに、それを教えるべき親や大人たちが、(先ほどの動物が死ぬ話のように)現実を見せないように遮断している。

自分がされて嫌なことを人にしないといった考え以前に、自分がこう行動すると相手がどう思うか?まずは、その点の想像力が大きく欠けてきているのです。そこへ持ってきて、この情報社会ですから、小学校の中・高学年ともなれば大人の社会の現実を徐々に知るようになります。「なんだかんだ偉そうなことを言っても、大人だってだらしないじゃん!」相手に対する想像力は欠如していても、批判精神はどんどん旺盛になってくるので、学年が進むにつれ、問題はますますややこしくなってくるんですね。




子どもたちの心の荒廃


 子どもたちの、心の荒廃が進んでいます。例えば、「いじめ」の問題。昔のそれは、組織的に一人の子を攻撃するといったものでしたが、最近は少し違います。いつ誰が、何かのきっかけでいじめの被害者になるかわからない状況なんです。いじめる側の子どもたちも、被害者になることを常に恐れている。だから、いじめることによって自分の身を守ろうとしている。誰がいつ被害者になるかわからない中で、「ゲーム感覚」でいじめをしている子が増えているんです。

北野たけしさんが、ある番組で「いじめって、面白いんだよね。でも、後で考えたらひどいことをしたなぁって思うんだよね…」と言っていましたが、誤解を恐れずに言えば、いじめの本質は、この「面白い」ということだと思うのです。人の不幸な姿を見て優越感を得たい、人を攻撃することでストレスを解消したい。などといった、屈折した欲求を満たすことに面白さを感じているのです。いじめは、人の人間性を否定する、とても卑劣な許されない行為です。また、子どもの世界に限らず、大人の社会にもある根の深い問題でもあります。学年が進むにつれ、陰湿さが増し、いじめの解決は難しくなります。

いじめの相談を受けると、私はいつも言うんです。『子どもがいじめられているのを知っていて、「学校へ行きなさい!」というのは絶対にやめてください。大人は、会社が嫌なら辞められるんですよ。子どもだって同じ。嫌なら行く必要はないんです。世間体なんて、どうでもいいじゃありませんか?無理に学校へ行かせようとするのは、子どもをもっと苦しめるだけ。それは、親もいじめに加担することになるんですよ』

そして、問題が大きくなって暴力を受けるに至ってしまった場合は、迷わず警察へ行くことをおすすめしています。学校に何度文句を言ったところで、基本的に問題は解決しません。むしろ、いじめはエスカレートすることが多いんです。話を大きくして問題にすることで、加害者に自分のやった行為がいけないんだということを、身をもって知らしめることが大切だと思うのです。




最近の小学校の入学式は…


 最近は、小学校の入学式がひどいことになっているそうです。式場の体育館に入場する時からワイワイガヤガヤ騒いでいる。先生が新1年生の名前を大声で呼んでも、返事をしない生徒がいる。写真屋さんが記念写真を撮ろうにも、走り回って撮影ができない。一昔前までの厳粛な雰囲気は、今はまったく見られないそうです。

入学時点でこんな状況ですから、その後は推して知るべし。授業に参加できない。立ち歩く。奇声を出す。クラスメイトの頭をたたく。これらの光景が、そこらかしこの小学校で当たり前に見られるのです…。今の時代、学校の先生は実に大変です。例えば小学校では、家庭での最低限のしつけができていない子が、クラスに何名もいて、注意をしても効果がないどころか、「自由にさせることが、ウチの教育方針です!」などと、親に逆ギレされることも多いとのことです。




大人は子どもの手本になる


 ちょっと暗い話になってしまいましたが、いじめの問題にしても学級崩壊の問題にしても、大人(親)が子どもたちに、小さな時期から『人に対する想像力、人を思いやる心』を伝えることで、大きく減るはずだと思います。単純明快な結論ですが、これがなかなか難しいんですよね(笑)。

子どもは、正しい・正しくないとか、美しい・美しくないということに、大人が思う以上に敏感です。大人は、子どもが小さいころに、そこの部分を可能な限り引き出してあげなくてはなりません。奇麗な景色を見て「奇麗だなぁ」と思うこと。楽しい時に「楽しいなぁ」と思うこと。悲しい物語を読んで「悲しいなぁ」と思うこと。そういう経験を通し、対話を積み重ねて、人を思いやる心が養われるものだと思います。結論を言ってしまうと、親(大人)は子どもの手本になってそれを示さなくてはならないということですね。

学習塾を経営していると、多くの親御さんとお会いする機会があるのですが、ごくまれに、『しつけを放棄している』としか思えない方に会うことがあります。「塾で、しつけもお願いします」と言われた時には、意識が遠のきましたね!もちろん、丁重に入会をお断りしましたが(苦笑)。おかげさまで、現在は、とてもご理解のある保護者の方ばかりです。成績を本気で上げようと思うなら、まずはご家庭のご理解とご協力が不可欠です。今後も、変わらぬご支援のほど、お願い申し上げます。




<今月のまとめ>


・子どもの心の荒廃の原因は、人を思いやる心の欠如。
・いじめを受けている子を、無理に学校へ行かせようとしてはいけません。
・大人は子どもの手本になる。
・成績向上には家庭の協力が不可欠。




講師雑感J〜続・斉藤一人さんのテープ〜


 先日ご案内した斉藤一人さんのテープですが、たくさんの方からご請求いただきました。「テープを聴いて感動しました」と、わざわざお電話を下さったお母さまもいらっしゃいます。私としてもとても嬉しいです。こちらこそ、ありがとうございます。このテープは、実業家の間で1本100万円!で取り引きされていたり、芸能界でも多くの方が聞いているそうです。

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