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  VOICE   No.21  

平成17年3月

学習塾講師という職業


今回は、学習塾講師の知られざる生態(?)についてお話しします。業界の裏話なので、面白くないかも知れませんが、お付き合いください。(「学習塾選び」に、ほんの少し役立つかも知れません)よく世間一般に、「学校の先生は、世間知らず」などと言いますが(←学校の先生、ごめんなさい!)、実は学習塾講師も同様です。

今回は、自戒の念も込めて、書き進めてみたいと思います。たまに、「塾の先生って、どうやったらなれるの?」と生徒に聞かれますが、「やろうと思って、教える力があれば、誰でもなれるんだよ」と答えます。実際、学習塾講師という職業は、教員免許や公的な資格などは必要ありません。実力さえあれば、学歴も不問です。

ですから、大学生がアルバイトとして学習塾講師になる場合もあれば、英語力にたけた人が学習塾講師(英語)になる場合もあります。学生時代のアルバイトからそのまま採用された人、新卒採用者、色々な職業を転々とした中途採用者など、学習塾講師の顔ぶれは、実に多種多彩です。




つぶしが利かない?


さて、「学校の先生や公務員は、つぶしがきかない」とよく耳にしますが(←学校の先生、重ね重ねゴメンなさい。べつに恨みはありませんので、お許しを!(^・^))、これまた、学習塾講師も同様だったりします。我々は、子どもたちに学習指導をすることから、一応は「先生」と呼ばれる身の上です。そのせいか、何か大きな勘違いをしている御仁が多いという業界だったりします。

学習塾などの教育産業は、言うまでもなくサービス業です。ところが、サービス業従事者としての基本姿勢を知らない人、具体例を挙げると、いい歳をして「保護者・生徒へのあいさつが、きちんとできない」「電話の応対など、基本的なマナーに欠ける」「職場の整理整頓や、美化ができない」「身だしなみがだらしない」「時間や締め切りにルーズ」などという人間が、悲しいかな多い業界なんです…。

学習塾講師を2・3年もやれば、授業の重要ポイントや試験に出る所は、誰でも分かります。授業内容は、ほとんど毎年同じものですから、10年や15年もやっていれば、誰でもベテランの域に達するものです。問題は、その他の部分です。社会人としての総合力、その意味で見てみると、社会常識やバランス感覚に欠ける人間が多い業界といえます。他の業界より、上下関係が希薄だったり、指揮・命令系統がアバウトなことが、大きな原因なのかも知れません。ともあれ、まだまだ生ぬるい業界です。




勉強をしない学習塾講師


さて、ここでものすごいことを暴露しちゃいますね(笑)!学習塾講師の大半は、本当に勉強をしないんです!(ただし、大学受験を担当している場合などは、勉強の負担は大きいものです)ここでいう勉強とは、生徒の学習指導だけではありません。「より良い指導法」を研究するとか、魅力的な授業をするために「話し方」を研究するとか、社会人として「自分のスキルを高める」とか、企業人として「より上を目指す」といった勉強のことです。

子どもたちに、「勉強しなさい」と言っておきながら、自分自身は勉強をしない。世の中の仕組みや世事にうとい。この手の人間が多い業界です。学習塾は、基本的に午後からはじまる商売ですから、学習塾講師の生活は、どうしても夜型になってしまいます。しかし、早起きをすれば、普通のサラリーマンより多く時間を確保できる職業です。その気になれば、資格試験やスキルアップの勉強に充てることも、十分に可能です。ところが、昼までグウタラ寝ている同業者も多いんです。ちょっと早起きすれば、もっともっと自分を高めることができるのですが(苦笑)。




評価はされるものなんですが…


学習塾はサービス業ですから、一般のお店屋さんと何ら変わりがないはずです。「う〜ん、あそこの店は、店員教育が素晴らしい♪」「いやぁ、あそこの店は、本当に感じが悪い」といったように、お店を評価するのは、言うまでもなくお客さんです。

学校では、「ひいきをしてはいけない」と教わりますが、世の中に出たら「ひいきをしてもらう」人間になることが求められます。お店は、お客さんにひいきをしてもらうように、努力をしなければなりません。お客さんの求めるものを提供し、お客さんに喜んでいただかなければ存続できません。学習塾もまったく同じです。求められるサービスを提供し、常に研究し、改良を加えていかなければなりません。

学習塾・学習塾講師は、評価される側にあります。ところが、学習指導をする中で、知らぬ間に評価する側に立っている学習塾講師が多いんです。学習塾によっては、講師を生徒のアンケート調査で評価する所があります。学習塾講師の評価と人気は、アンケートを取れば一目瞭然です。自分が「評価される側」にあることを知っている講師は、常に上位をキープし、「評価する側」に立っている講師は、良い評価を得られません。私自身は、生徒のアンケート調査が好きです。でも、評価の低い学習塾講師にとっては恐怖みたいですね(~o~)。




指導力以前に大切なもの


私が学習塾講師になりたてのころ、正直、自分の指導にあまり自信を持てませんでした。ある程度自信を持てるようになるのに、1年ほどかかったと記憶しています。ところが、不思議なものなのですが、多少未熟な学習塾講師が教えても、生徒の成績は上がるんです!経験の浅い、若い学習塾講師と、ベテランの年配の学習塾講師が同じ内容を教えたとします。普通は、「ベテラン講師が教えた方が、成績が上がるはず」と思いますよね?ところが、現実は必ずしもそうとは限らないのです。

学生時代に、「○○の教科の先生が大嫌いで、だからその教科が嫌いになった」という経験がおありの方がいらっしゃると思いますが、勉強がわかるわからない以前に、教える人物が好きか嫌いかということが、実はすごく大切なのです。ですから、経験が足りず、指導力が多少劣っていたとしても、「生徒に好かれる学習塾講師」であれば、子どもたちの成績は、ほぼ確実に上がるんです。




プロのこだわり


プロの学習塾講師は、行動して自分の想いを「形」にすることにこだわります。子どもたちに想いを伝えること、結果を出すことに真剣です。そのために何をすべきか?いつも考え続け、行動し続けています。逆に、行動力のない学習塾講師、理念のない学習塾講師は、責任を転嫁し、過去の栄華(?)にこだわります。

「昔のように、打てば響くという授業をしたい」「昔のように、レベルの高い授業をしたい」「今の子どもたちの学力は低すぎて、自分の指導力が発揮できない」このように過去を振り返ってばかりいて、指導力のなさ・信頼の低さを、責任転嫁します。

学習指導を通し、子どもたちに努力して結果を出すことの大切さを、体験を通して知ってもらうのが我々の仕事です。しかし、残念ながら、経験の上にあぐらをかいてしまい、研究心や向上心に欠けている人間も多くいます。悲しいかな、ベテランであっても、そういう学習塾講師が多かったりします。




2割の人気講師


プロの学習塾講師であるならば、まずは相手(生徒)の力を、徹底的に分析するはずです。そして、結果を出すことにこだわり、そのための手段を論理的に考え、想いを伝え、行動でそれを示すはずです。2対8の法則というものがありますが、これは、我々学習塾講師にも当てはまるものと思います。

保護者の方と子どもたちに信頼され、実力も人気も兼ね備えた2割の学習塾講師と、そうではない(そのレベルに達していない)8割の学習塾講師。私見ですが、そのように思います。




やはりバランス力です


同業の私から見ても、「この人は、プロフェッショナルだなぁ!」と感心する学習塾講師や家庭教師がいます。彼らに共通するものは、指導力は当然として、バランス感覚がとても優れていることです。我々の仕事は、まず第一に「生徒に好かれる」ことが絶対条件ですから、それをクリアできない講師は、永久に人気講師になることはできません。

次に、「保護者の方と、きちんと話せる」ことなどの、社会人としての基本的なマナーが身についていなければ、これまた、遅かれ早かれ必ず淘汰されます。学習指導や進路指導などは、こう言っちゃなんですが、その後の努力で、何とでもなります。

さて、ここまで書き進めてきましたが、私自身、反省すべきことが多々あります(>_<)。偉そうなことばかり書いていますが、学習塾講師としてもまだまだ未熟ですし、学習塾経営者としても同様で、いまだに迷うことばかりです。ここだけの話ですが、「俺って、人を見る目がないよなぁ」「俺って、人を使う能力がないのかなぁ?」と落ち込むことが何度もありました。業務命令や指導方針に従わない者を解雇したことも、何度かあります。

今号は、一人の学習塾講師として、自戒の念を込めて書きました。求められる最良の学習塾であること。求められるプロフェッショナルの学習塾講師であること。新年度を迎え、気持ちを引き締めております。今後も、ご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。<(_ _)>