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  VOICE   No.24  

平成17年6月

中学社会はこんな感じです


早いもので、学習塾講師という職業について足掛け16年になります。私は、釧路市内の大手学習塾の専任講師を振り出しに、おもに社会科を中心に担当してきました。15年が経ち、小学生・中学生の学習内容は大きく変わりました。例えば中学の地理。昔のように、東北地方・関東地方・西ヨーロッパなどといった、各地域ごとに分けての学習を今はしません。今は、人口・食料・エネルギーといったように大きなテーマごとに勉強するように変わりました。(定期試験の出題傾向は大きく変わったものの、高校入試の出題は以前とあまり変わらなので、最近は地理が苦手な生徒が増えています)

中学の歴史では、教える内容が減り、文化史の一部などは削減されました。(ちなみに、最近は学校で年号を覚えるように指導することはほとんどありません)学習内容は大幅に削減され、教科書の記述も、以前のように詳しいものではありません。(歴史と公民は、学習する内容は以前とそれほど大きく変わりませんが、地理については本当に大きく変わってしまいました)




情報処理力と情報編集力


このように、子どもたの学習内容も変わりましたが、世の中はもっと大きく変わりました。少し前までなら、「知識を身につける力」が尊ばれた時代でしたが、現在は「情報を収集・分析する力」が尊ばれる時代になりました。「よのなか科」で有名な藤原和博さんは、前者の力を「情報処理力」、後者のそれを「情報編集力」と定義しています。これらは車の両輪であり、これからの世の中を生きるためには、この二つの力をバランスよく身に付けることが大切だと氏は説きます。(よのなか科と藤原和博さんについては、当ニュースレターvol.10と「よのなかnet」 http://www.yononaka.net/をご参照ください)

「情報処理力」は、「ジグソーパズル」をやる時の力。この作業は、暗記した知識(ピース)をいち早く取り出して正解を埋めていく試験に似ていて、例えば、何万点の部品からできている自動車を、より早く・より安く・より高品質に組み立てるといったような、工業化社会に必須の能力のこと。「情報編集力」は、「レゴ」で遊ぶ時の力。ただ一つの正解があるのではなく、ああでもない、こうでもないと、ピース(知識)を利用して組み立てながら、試行錯誤を繰り返して作品を作り上げる力のこと。人生には、この二つの力が必要である。氏の説明は大変に分かりやすく、説得力があります。(参考文献・一部引用「民間校長中学改革に挑む」/藤原和博・天野一哉著/日本経済新聞社)




生きた知識を教える必要性


さて、長年学習塾講師をしてきましたが、常にジレンマを感じてきたことがあります。学習塾の使命(存在価値)は、言うまでもなく、成績の向上と受験の突破です。「いかに効率の良い学習をさせるか?」「いかに最短ルートで成績を上げ、結果を出すか?」プロの学習塾講師として、学習指導のテクニックを常に考え続けてきました。しかし、一方では、「はたして、これだけで良いのだろうか…?」と思う自分が常に同居しています。

学校や塾では習わないけれども、世の中を生きていくうえで大切な知識。そのような、言わば「生きた知識」や「世の中の実際」を、中学生や高校生に伝えることはできないものだろうか?ここしばらく、自問自答を繰り返してきました。以前、このニュースレター(vol.10)にも書きましたが、「私教育版・よのなか科」を始動させたいと考え続けてきました。別に発行しているニュースレター「契約学習通信」(悪徳商法の手口やその対処法/契約の基本ルールなどを書いています)は、その思いで書き続けているものです。




時代錯誤の学習内容?


お父さま・お母さまも、中学時代に「公民」で国会・内閣・裁判所のいわゆる三権分立のしくみや、経済のしくみを学習したことを覚えてらっしゃることと思います。例えば経済の単元では、商品の流通の経路を、「生産者」→「卸売業者」→「小売業」→「消費者」と習いました。(今でもそうです)しかし、これは現代社会の実態に合っていませんよね!今は、卸売業を仲介しない販売の仕方も一般的ですし、この図式では6割を超える方が従事しているサービス業が登場しません。

労働問題や悪徳商法の記述にしても、とても将来役に立ちそうなものではありません。公民では、「商品」についておよそこのように学びます。「人に売るために作った品物を『商品』と呼ぶ。商品は、形のある『財』と形のない『サービス』に分けられる」私はいつも思うのですが、そもそも日常生活で「財」なんて言い方をすることなんかありませんよね!

同じく公民の経済の単元では、「貨幣のはたらき」を学びます。(この三つ、定期試験には必ず出題されるのです!)@「価値の尺度」…財やサービスの価値を、価格の大きさとして表現する。A「交換の手段(支払手段)」…商品代金の支払いや給料の支払いなどに利用できる。B「価値の保存」…貯蓄など価値を保存する働き。たしかにその通りです。しかし、「だから何なんだ!」って言いたくなるのは私だけでしょうか(苦笑)。お金がどういう働きをしているのかなんて、小学校の低学年にでも分かることです。で、この三つを覚えることが何かに役立つのでしょうか?

私のジレンマとは、「点数を取るために、学習塾講師として『絶対、テストに出るぞ!』と言っているものの、こんなしょうもないことを覚えたって、何がどう変わるの…?」という思いです。仕事とはいえ、点取りのためのテクニックを伝えるだけという姿勢に、そろそろピリオドを打とうとの思いです。




俺がやらなきゃ誰がやる!


 もうこうなったら、やるしかありませんよね!\(^o^)/「俺がやらなきゃ、誰がやる!」ってなことで、思いを形にするしかありません。私は社会保険労務士・行政書士でもあるので、普通の人よりは法律的なスキルを持っています。(もちろん、得意分野と苦手分野がありますよ)他方、プロの学習塾講師として、中学生・高校生に分かりやすい授業をするのもお手のもの(?)です。

となれば、一人でコラボレーションです(笑)。「まずは、自分が率先して動いてしまおう」「活動の趣旨に賛同してくれる人が出てくれば、この動きも加速して行くだろう」と考え、子どもたちの近い将来に、必ず役に立つ内容をピックアップして、シリーズ化して講義形式でお伝えしていくことにしました。




まずはルールを教えるべき


 第1回目は、別紙でご案内差し上げたとおり、「親子で学ぶ・働くルール」と題して、働くルール(=労働基準法の解説)を行います。近年、若者の職業観の低下が指摘されています。会社からみれば、「お前、何をしに会社に来ているんだ?」と思う若者が増加しているわけですが、若者からしてみれば「働くルール自体がわからない」のですから、一概に若者だけを責めるわけにもいきません。

会社に勤めたなら、こういったルールがあって、君にはこういった義務がある。その代わり、君にはこういった権利がある。じゃぁ、それを知った上で、働くってことを考えていこうね。こういうことを誰かが(できれば弁護士や社会保険労務士などの労働問題のプロが)早い時期に教えたなら、状況は変わってくるものと思うのです。考えてみれば、ルールをきちんと教えもせずに、「ルールを守りなさい」というのも変な話ですよね!




プロの腕の見せ所?


 というわけで、現在、テキスト(というほどのものでもありませんが)を作成中です。通常、この手のセミナーは、経営者や中堅社員に向けて実施されるものなので、中学生・高校生にも分かるように行うという話は、聞いたことも見たこともありません。一般には、「無謀な企画」の部類に入るでしょうね(爆)!

法律用語って、身近なことば・分かりやすいことばに置き換えてしまうと、意味が違ってしまったりニュアンスが伝わらないものなのですが、その点は…。うーん、まぁ何とかします。(←本当?)ウチの塾の授業より、ずっとずっと役立つ内容。しかも、近い将来に、必ず役立つ内容(あっ、言っちゃった。ゴメン、講師のみんな!)の授業を、プロの学習塾講師(と社会保険労務士)のプライドをかけて、全力でやりますからねっ♪(^_^)v




応援をお願いします!


 そこで、みなさまにお願いがあります。セミナーは、どなたでもご出席いただけますので、お知り合い・お友達等、たくさんの方にお知らせください。(中学生・高校生のみならず、大学生・社会人・経営者にも役立つ内容です)学校関係者のご出席も大歓迎です。プロの学習塾講師が、「全力」で行う授業を、ぜひ目にして欲しいと思います。(←あっ、言っちゃった〜!)みなさま方のご出席を、心よりお待ちしております。まずは、たった一人から行動を起こします。援護射撃をお願いします!