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  VOICE   No.32  

平成18年3月

30代・40代が一番かしこくなる時期

私、以前から本気で信じていることがあります。反論を多くいただきそうですが、「人間は、30代・40代が一番かしこくなる時期だ!」と、心底本気で信じています。今や、人生80年・90年の時代です。30代・40代といえば、人生の折り返し地点か、その前にすぎませんよね。

「もう40代だから、勉強なんかできない」とか、「若くないから、今から新しい専門知識を身につけるのは無理」といった発想が、これからは全否定される時代になると考えています。(ちなみに、頭の老化防止には、30代から50代の間にどんな知的な活動をおこなうかが深く関係しているとのことです)

学生時代の勉強というものは、極論を言えば、知識の量の勝負です。ところが、大人の勉強(仕事もそうです)は、「正しい知識」をもとに「推論」「検証」を経て、「結果」を出すことが求められます。学生時代の頭のよしあしは、知識のインプットの勝負です。与えられた条件の中で、速く正しく解答を導く力のみが求められますが、大人のそれは、知識をどう役立たせるかこそが大切になります。

20歳の自分と勝負すると

以前、たしか法律系の資格試験だったと思いますが、合格体験記を読んで、「なるほどなぁ」と思ったことがあります。その人は、大学を卒業後、何度か試験にチャレンジしたものの、ことごとく失敗に終わったそうです。ところが、30代になって再び試験にチャレンジしたところ、あれだけ苦手だった法律の勉強が、意外なほど順調に進んだといいます。

私もまったく同感なんです。例えば会社の設立時に、定款という根本規則を定めますが、若いころはそんなものを実際に目にすることなんてないですよね。勉強をしていても?マークだらけでしょう。時効とか抵当権とかいっても、大半の若者には、何のことやらさっぱり分かりませんよね。

ところが、社会人として経験を積むうちに、民法に登場するそれらの知識を、実社会の中で否応なく耳にして知るようになります。学校で習った知識は忘れてしまっても、実生活や仕事で必要になる知識は、年々確実に身についているものなんですよね。

そういうわけで私、もし20歳の自分と今の自分が、「○○の資格を取得するぞ!」と勝負したなら、今の自分の方が、短期間で結果を出すことができると思うのです。(^_^)暗記力だけの勝負をしたなら、まったくお話しにならないでしょうが、大人の勉強は総合力の勝負です。

記憶力は衰えても

子どものころとくらべると、「記憶力」については、格段に衰えているものですよね。でも、理解力や判断力という点では、30代・40代の方が確実に勝っていると考えます。私自身も、昔とくらべて記憶力はかなり落ちましたが、理論的にものごとを考える力は、逆に若いころよりも大きく伸びていると感じています。

私が子どものころ、「人間の脳細胞の数は、120億とか130億個あるんだよ」と習った覚えがありますが、今は、1000億個といわれています。何だそれ?まったく違うじゃありませんか。もう、ムチャクチャいいかげんな数字だったんですね(笑)。

で、その1000億個の脳細胞は、大人になると、1日約10万個のペースで減っていくそうです。1年間で3650万個、10年間で3億6500万個、50年間で18億2500万個が減ることになりますが、計算してみると、50年たっても全体の2%弱しか減らないんですよね。

それに、天才といわれる人ですら、脳の20%程度しか使っていないそうですから、「歳をとったら、頭が悪くなるんだ」という思い込みは、まったくのナンセンス。根拠のない、非科学的な考えということになります。

使わないものは衰える

「記憶力が落ちた。だから頭が悪くなった(勉強ができなくなった)」と考えるのも、大きな間違いです。筋肉を使わなければ衰えてしまうのと同じで、使わないと脳細胞も衰えてしまうことが、科学的にも立証されています。

学生時代に、「本当に勉強ができるなぁ」と驚いた秀才が、一流大学を出て社会人になったものの、その後は特に大きな仕事をしているわけでもないといった事例は多いものです。反対に、学生時代は勉強がさっぱり。でも、世の中で成功している人は多くいるものです。

社会人になると、自分の持っている知識を駆使して、「問題を発見する能力」と「問題を解決する能力」を働かせることこそが求められます。学生時代とは別の頭の働かせ方が求められるので、大人の頭のよしあしは、学生時代の成績とは無縁のものです。

サバイバル時代へ

さて、ここしばらくの間で日本は大きく変わってしまいました。終身雇用制・年功序列賃金制は崩れ、格差の大きい競争社会へと急速に変化しつつあります。高校や大学を卒業してさえいれば、特に資格を求められなかったサラリーマンにも、高度な専門知識が求められる時代になりつつあります。

無遅刻・無欠席で働いていれば、生活が保障されたという時代は去り、結果を出さなければ、真っ先にリストラの対象になってしまいます。また、学歴があったとしても、資格や技術がなければ、転職もままならない時代です。

加えて、世の中のスピードが極めて速くなり、「昨日の知識は今日はゴミ」といった具合に、せっかくの知識や資格も、その賞味期限が極めて短くなってきています。これらの傾向は、今後さらに加速するはずです。

上の世代との勝負

今までは、就職や昇進は同年代の人間との勝負といえましたが、これからは違ったものになるはずです。終身雇用制が崩壊しているわけですから、20代も30代・40代(おそらく50代も)も、同じ土俵で勝負して、結果を出すことが求められる社会になるでしょう。

最近、「格差社会」が問題視されていますが、格差増大の傾向は、加速こそすれ解消することはないと考えます。ということは、今の子どもたちは、近い将来、上の世代を敵に回して勝ち抜いていかなければならないことを意味します。30代・40代の人たちも、若い世代に負けないように、知識やスキルを身につけることが求められる。そういう世の中になるはずです。

子どもを鍛えなければならない理由

ちまたでは、景気が上向いているとされていますが、私は、日本の景気が、昔のように良くなることは二度とないと考えています。(釧路に住んでいると、景気回復なんて、これっぽっちも実感しませんよね!)

どういうことかというと、現在、中国経済がすごい勢いで伸びていますよね。先進工業国が、安い賃金と大量の労働力を求めて、製造業を中国へシフトした結果ですが、やがて中国経済が成熟すると、今度は北朝鮮や東南アジア諸国に拠点がシフトし、その後はアフリカや中南米へとシフトしていくはずです。

そうやって、地球全体が、富を分配する方向に進むと私は考えています。超スピードの時代ですから、日本が戦後60年で成し遂げた経済発展を、中国は10年たらずで達成するでしょうし、その後の他国の経済発展は、もっとスピードが上るものと思います。

そういう前提に立って考えてみると、子どもたちには、親の世代とは比較にならないほど、「たくましく生き抜く力」と「バランス感覚」が求められることになるはずです。親の世代は、学歴という看板を背負っていれば渡りやすかった流れが、これからはそうはいきません。流れは格段に速くなり、水深も深くなっているのですから。

総合力を鍛える必要性

ところが、今の子どもたちは、こと勉強についてはとても楽をしています。時代の流れを考えると、今まで以上に鍛えなければならないのに、国が積極的に逆の方向に仕組んでいるのですから、困ったものです…。

今までは、何か一つ特技や能力があれば、それだけで評価された時代でしたが、これからは、社会人としての「総合力」がものをいう時代になるはずです。

つまりは、子どもたちは30代・40代になってもスキルを高め続け、専門性を磨くことが求められるようになるはずです。だったら、親は子をどう鍛えるべきか?真剣にそれを考えなければなりませんよね。

確実に自分を高める習慣

子どもたちの将来を考えると、少し暗い気分になるかも知れませんが、ご安心を(笑)。誰にでも簡単にできる、「確実に自分を高める習慣」があります。それは何か?ズバリ、読書です。学生時代に、勉強ができなくたって、読書を続けていれば何とかなるもんです。逆に、読書をしない人の能力は、必然的に限られたものになってしまいます。

知識や技術の習得には、何といっても読書が一番です。人間は、知識の80%以上を、読書を中心とする活字媒体から得るのですから。私自身は、ビジネス書の類をよく読みます。(小説は仕事に役立たないので、最近はほとんど読みません)若いころは、乱読でも良いので、色々な本を読んで見識を広げ、大人になったら「仕事の役に立つ本」を、可能な限り読むようにする。そうすることで、社会人として必要な知識とスキルが養われ、総合力とバランス感覚が自然に高まってくる。そう考えます。

塾生のみなさんへ。勉強が嫌いでも、読書だけはするんだよ。どんなに勉強ができなくたって、10年・20年と読書を続けていれば、気づいた時には驚くほど進歩しているものです。ホントだよ。大人の勉強っていうのはね、実は読書をすることなんだよ。