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  VOICE   No. 43 

平成 19年 3月

今の若い者は…

先月は、業務多忙につきNLをお休みしてしまいました。申し訳ございません。さて、今月も例によってヘンテコリンな内容です。「今の若い者は、なっていない」と若者を批判する声を耳にすることが多いですが、それは今の日本だけではなく古今東西言われ続けてきたことだそうです。

大昔のエジプトの遺跡から、「最近の若者は、なっていない。わしの若いころは…」という象形文字が見つかったとの話があります。それが事実かどうかは知りませんが、若者は、いつの時代、どこの国でも批判されるものなんでしょうね。

もちろん、私の世代も言われました。「今時の若者は、感動が薄い」とか「今時の若者は、何に対してもシラけている」(←「シラける」って死語ですよね!)などと言われたものでした。今回は、若者批判に異を唱えて、「今の若者は、たいしたもんだ」というお話をさせていただきます。

良い子・悪い子・普通の子

 僕らの世代は、受験地獄などと形容された学歴社会に育ちました。「一流大学を卒業して一流企業に就職すれば、将来は安泰」そんな考えがまかり通った時代でした。時は流れ、終身雇用制・年功序列賃金制、学歴社会が急速に崩壊しつつある現在、今にして思えば、「あの学歴至上主義の考え方は、一体何だったのだろうか?」と、魔法にでもかけられていたかのような違和感を感じます。

昨今、子どもたちの学力低下が深刻な社会問題になっているのはご存知の通りですが、僕らのころだって、勉強をする子はしたし、しない子はしませんでしたよね。(ただし、平均的な学力を比較したならば、昔と今とでは大きな差があること、勉強をしない子が、近年大幅に増えていることは悲しむべき事実です)

考えてみれば、当時の子どもは、「ガリ勉・普通・ワル」の三つにはっきりと分かれていたものでした。欽ちゃんの番組でもありましたよね。「良い子・悪い子・普通の子」というのが(笑)。

昔の釧路はこうでしたよね

 私は来月で40歳になりますが、僕らが中高生のころの釧路って、それは「わや」な状況でしたよね!変形学生服にパンチパーマやリーゼントの男子生徒、長いスカートを引きずった、桜塚やっくんみたいな女子生徒。ビー・バップな中高生(笑)がたくさんいて、土曜の夜ともなれば、ヤンキー少年とヤンキー少女で、街はあふれていましたよね。アハハ(^^)。

北大通りを暴走するバイク・車がたくさんいて、パトカーと追いかけっこしている連中や、交差点の真ん中でグルグル回っているヤン車(懐かしい響きですね)もいましたよね!当時はどこの中学校も荒れていましたが、私が通っていた、今はもう廃校になった、海に面した某中学校も同様でした。

あのころの釧路は、中高生の喧嘩や暴力沙汰は日常茶飯事だったし、先生を殴ったり、校舎のガラスを割ったりする、ろくでもない連中がたくさんいましたよね。えー、かく言う私も、反省することがいっぱいあるんですけど(苦笑)。このNLでは書けないことも、たくさん見聞き(一部体験も)しました。もう、ホントにバカタレな若者が多い時代でしたよね。

バイクはおじさんの乗り物?

 バイクや車を盗んで乗り回したり、カツアゲしたり(おっと、これ以上は書けない!)、僕らの世代は、悪いことをやった連中が多かったけれど、今の釧路の若者には、そんなバカタレはほとんどいませんよ。(元ヤンキーの友だちも、良いお父さん、良いお母さんになっていて、今となっては笑い話ですけど!)バイクや車で暴走するお兄ちゃんなんかも、めっきり減りましたよね。

そもそも、「バイクに乗りたい」とか「速い車に乗りたい」と思っている若者自体が少ないんです。バイク乗りの私としては寂しい限りですが、今の時代、バイクって「おじさんの乗り物」なんです。おっと、そう言い切ったなら、叱られるかも知れません。

正しくは、【昔と違って、若者がバイクに興味を持たない。免許を取らない。バイクに乗らない。】【昔、バイク小僧だった人が、今でもバイクに乗っている。よって、おじさんライダーが多い】ということです。たまにバイク屋さんに顔を出してみても、お客さんの平均年齢が高いんですよ。かく言う私も、すでに「おじさんライダー」だったりするんですけど。

こんな世の中にしたのは誰ですか

 「今の若者は、なっていない。フリーターやニートなどけしからん!」と若者を批判するのは簡単ですが、じゃぁ、こんな世の中にしたのは誰ですか?例えば、団塊の世代の方の多くは、都会に出て集団就職をしましたが、時は高度経済成長の真っ只中。労働力不足から、中卒は「金の卵」と呼ばれて、大切に扱われました。

今の中国みたいなもので、ごく短期間に日本各地に多くの工場が建ったので、それは多くの就職口があったわけです。昔は、今よりも企業が手厚く保護してくれたということもあり、工場に勤めながら夜学に通った人も多かったそうです。(私の亡き父も、家が貧しかったので、働きながら定時制高校に通いました)

ところが、今の若者にはそういう選択肢は与えられていません。就職口自体が少ないわけですから、昔と比べて圧倒的に不利な状況に置かれています。「勉強が嫌いだ。早く世の中に出て働きたい」と思っている若者の受け皿が激減しているのに、若者を一方的に批判するのはいかがなものでしょうか?

子どもたちの学力低下にしても、国が「ゆとり教育」という馬鹿なことをやった結果であって、子どもたちは被害者です。国がまともな教育を提供しないで、親も学力低下に不安を感じているのに手を打たないで、それでいて勉強ができないと子どもを非難するのはいかがなものでしょうか?それってフェアじゃないですよ。

今の若者は立派である

 さて若者よ、おじさんが弁護するぞ(笑)。はい、今の若者は立派ですよ。まず、昔とは違ってコミュニケーション力が格段に高いと思います。僕らのころだったら、ワルグループ・ガリ勉グループ・普通グループなどがあって、他のグループとの交流ってほとんどなかったですよね。ところが、今の子はそうじゃないんです。

交友範囲が広くて、みんなが仲良かったりするんですよね。そういう子どもたちを見て、「今の子どもは、友だちとの付き合いが希薄だ」などと大人は言いますが、逆の見方をすれば、付かず離れずの絶妙な距離感で、広く人付き合いをしているんですよね。会話も軽妙洒脱だし、じっくり付き合って観察してみると、年々コミュニケーション力が進歩していることを実感します。

「今の子どもは、普通に見える子が悪いことをするからね…」などと大人は言いますが、昔のように「ワルは、見るからにワル」「まじめな子は、見るからにまじめ」といった見分けは難しいですよ。昔みたいなバカタレはごく少数ですから(笑)。

ダメなのは大人の方

 それに、「将来のこと」をしっかり考えている子が多いんです。「将来は○○になりたい」「だから、××高校・△△大学を目指す」と、自分の進むべき方向を明確に定めている子も多いものです。あいさつだって、きちんとできる子が多いし、むしろ、僕らの世代なんかより、マナーも良識もありますよ!はっきり言って、ダメなのは大人の方です。

例えば、高校生がバスに乗っていて、年配の方が乗って来たとします。勇気を出して「席、どうぞ」と譲ろうとしたのに、「馬鹿にするな!俺は年寄りじゃない!」って怒鳴られたなら(これは、私の実体験)、「もう二度と席を譲るもんか…」って思っちゃいますよ。

そんな時は、周りの大人が「あんた、大人げないね」と注意して、席を譲った高校生をほめてあげるべきだし、そもそもバスの運転手さんがマイクで、「席を譲ってあげてね」と一言を言うようにすれば、状況はガラッと変わりますよ。席を譲らない高校生だって、本当は「譲りたい」「譲らなきゃ」という気持ちがあるんですから。(釧路のバス会社さん、検討してみてね)

大人は若者をほめるべき

 塾生と接していると、正直、自分の世代が「負けている」と感じます。(勉強は別ですよ)まぁ、本当にバカタレ世代でしたからね!世間一般に言われるのとは逆で、今の若者は立派である。本心からそう思います。昔のように、のんびり生きていくのは難しい時代になりましたが、若者は、環境に順応して上手に生きています。

言うまでもなく、今の世の中をつくったのは大人です。よく考えてみると、若者批判は今の世の中への批判ですよね。じゃぁ、この世の中を築いてきたのは誰なの?ということになり、つまりは大人社会全体を、ひいてはその構成員の自分を批判しているのと同じことだと思うんです。

世の中を良くしようと思うならば、大人は若者をほめるべきである。それに、「今の若者は…」と言うことは、「自分はもう若くない」って認めることですし(笑)。今の若者は立派ですよ。